たけしの忙中閑話

プロジェクトX・・・

経済の話は本当に難しい。あの評論家の意見を聞けば、「なるほど」とうなずいてしまうし、この評論家の本を読めば、たとえ対極的な意見であっても「ああ、そうか」と思ってしまう。難解な専門用語を交えたミクロ分析、マクロ分析、の話をいくら聞いてみても心の底から納得する答えにはなかなかめぐり合わない。そういう意味では連日、国会での議論を聞かされ続けている国民もまさに隔靴掻痒の感を強くしているに違いない。

そんな中で、観るたびに我々を確実に勇気づけ、何かしらの確信を持たせてくれる番組がある。他ならぬNHKの「プロジェクトX」である。私が最近、もっとも気に入っている番組だ。毎回、田口トモロヲさんとやらのいささか過剰に抑制されたナレーションに乗って報じられる、高度成長時代の先達の「成功物語」である。ほとんどの話は「ものづくり」の最先端にあった技術者達の苦闘のものがたりである。現代の「匠」の根性物語と言っていい。

主人公はほとんどの場合、会社でも日の当たらない部署にいる名もない技術者たちである。ある日、彼らに「実現不可能」とも思われる新製品開発の命がくだる。多くの者が尻込みをする中で、一人の技術者がすくっと手をあげ、「やってみましょう」と提唱する。案の定、「バカな奴だ」とみんなに嘲われる。それでも当人は断じてくじけない。やがて、一人、二人とその情熱にほだされてチームが形成されていく。そこから地獄のような試行錯誤の日々が始まる。一歩前進、二歩後退。それでも寝食を忘れた粘り強い探求が続く。そして、ある日、ついに不可能と思われた新製品が開発され、爆発的なヒット商品へと成長していく。。。。

感動的なのはスタジオに招かれた当時の開発担当者がそこまでの映像を見て感極まるシーンである。苦闘を乗り越え、成功を達成した年老いた男達の目にうっすらと涙が光る。「ものづくり」に人生を賭けてきた現代の匠たちはそこで言葉を失い、しばしの静寂が番組を包む。観ているこっちも目頭が熱くなる。まったく、番組サイドの狙いどおりの反応だな、と思わず苦笑しながらも毎回、そこで胸がジーンと熱くなってしまう。日本の奇跡的な成長はまさしくこの男達の汗と涙の結晶の上に築かれたのだ、と疑いなくそう思える瞬間だ。

日本の経済の低迷が続いて久しい。政治がていたらくで有効打が打てなかったからだという指摘も間違いではないだろう。それがゆえに連日、ああでもない、こうでもない、という激しい議論が続いている。しかし、政府も政策も決して万能ではない。肝心なのは我々一人一人の日本人がもう一度、自力で立ち上がり、再びそれぞれの「プロジェクトX」に挑戦する気概を持ちえるかどうかにかかっているのではないか。その「魂」の総和こそが日本を蘇らせるような気がする。。。。

一番最近に見た「プロジェクトX」は不可能と言われた「金閣寺」の修復を成し遂げた職人さんたちが主人公だった。番組の最後に司会者が出演していた一人の金箔技師にこう聞いた。「もう一度、金閣寺の修復をやれ!と言われたらどうします・・・・」。
氏は答えて言った。「今度やったら、きっと命を落とすでしょうねぇ・・・・」。そこで氏は遠くを見るような眼差しをして口をつぐんだ。自分には「それでも・・・」という氏の声が聞こえたような気がした。
最初にもどる