たけしの忙中閑話

長女の留学

議員宿舎に同居していた大学三年生の長女が一年間の留学のため、ドイツへ向けて出発した。留学なぞ今時珍しいことではないが、実は娘は我が一族始まって以来の海外留学生なのだ。誠に喜ばしいことであり、誇らしいことだ。そして、内心、大いにうらやましく思っている。

小生はずいぶんと気楽な学生生活を送ったのだったが、今でも後悔しているのは学生時代に留学しなかったことだ。決して方法がなかったわけではない。留学するための各種の試験や制度などもあったが、要は決心が足らなかったのだ。そして、正直に怠惰であったと反省するしかない。今にして思うと実に悔やまれることである。

民間企業や役所に就職した同級生、あるいは、医師になった同級生などは社会人になってから、派遣留学やら、転勤やら、長期の研修やらで海外での生活を体験したものも多い。現にいまも何人かが海外で頑張っている。しかし、政治家などをやっている限り、今後もそのような可能性はないと言っていい。あぁ、21世紀に生きていて一度も海外での生活(旅行は別だ)を経験せずに生涯を終わるとは。。。なんと口惜しいことか。

長女は小生に似ておとなしい子である。いささか引っ込み思案のところもあって、これまた小生によく似ている(疑念を差し挟む方がおられるかもしれぬが本当である)。「海外なんかいつでも行ってやる!」と言いそうなのはむしろ活発な次女のほうだと思っていたのだが、長女は小生の「留学の薦め」に意外にも積極的に応じて自ら進んで準備に入った。彼女の専攻は「ドイツ文学」なので、できればドイツに行ければよいが、と思っていたのだが、幸いに大学の提携校との間で交換留学の制度があり、その考査に合格し、めでたく今般の渡航となったわけだ。

過去の忌まわしいできごとは別にして、日本人とドイツ人というのは相互に好印象を持っているのではないか。おそらく相性がいいのだと思う。勤勉で、いささか生真面目で、モノを作らせたら天下一品、というところもよく似ている。ドイツ人の作るものはなかなかに優れものだ。それは車一つとっても言える。日本の車もドイツの車もともに世界市場を席捲してはいるが、トヨタの最高級車であってもベンツの「品格」にはなかなか及ばないところがある。民族性というのは不思議なもので作ったモノに現われる。気質や特質といったものがそこに凝縮されるのだろう。そう言えば、一部の例外を除いて日本やドイツ発の「ファッション」は、なかなかパリやミラノのそれにはかなわない。

長女の行く学校はミュンヘンから列車で2時間半くらいかかる片田舎にあるというから、きっとそういったドイツ人気質が色濃く残っている町に違いない。一年という僅かな期間ではあるが、住んでみなければわからぬ国柄や民族性というものをよく理解し、大いに触発されて帰ってきて欲しいと願っている。

「青い目の彼氏を連れて帰ってきたら・・・」という心配がまったくないわけではないが、仮にそういう出会いがあるとするなら、それはそれでいいのだと思っている。家内などは以前から「国際結婚」に憧れているところがあって、「子どもたちで実験してみましょう」などと不謹慎なことを時折、口にしたりしている。

嘘か本当か知らぬが、「動物行動学的」に、あるいは、「遺伝学的」に言って、できるだけ遠くの者どうしが一緒になるとそれぞれの良き特性が開花し易いのだという。しからば、地球の裏側に住む者どうしが一緒になると一番よいということになる。あまり説得力のある説だとも思えぬが、少なくとも、車で5分のところから嫁(家内)をもらった小生としては大いに心動かされる説ではある。家内も密かにそう思っているのだろう。

そういえば、オバマ氏などはアメリカとケニアとの混血だ。そのホワイトでもなければブラックでもないという特殊な出自が先の大統領選の最大の売りだったし、世界一の多民族国家であるアメリカの有権者を引き付け、世界中を熱狂させた最大の理由でもあった。「留学生の息子が大統領になる」。いかにもアメリカならではの話だが、日本もこれからどんどん開放されていけば、やがては異民族の首相が誕生することだってあるかもしれない。しからば、小生の孫がドイツの宰相になる可能性だって決してゼロではない。。。おっと、つまらぬ妄想に走ってしまった。

「国際結婚」には正直なところ、小生も並々ならぬ関心を持っているのだが、普段、考えていることはもうちょっと低レベルであって、家内とはよく「来世ではイタリア人とロシア人に生まれ変わってまた逢おう」などと言い合っている。むろん、小生がイタリア人で家内がロシア人ということになるのだが、動機としてはお互いに「不純」だとの指摘は免れない。フム。こちらのほうがむしろ妄想に近いな。

いつの間にか話が脱線した。長女は勉強しに行くのである。何よりも健康で有意義な時間を過ごしてきて欲しいと願っている。海外で過ごす一年間は彼女の人生にとって忘れえぬものとなるだろう。途中で機会があれば、家内と格安の航空券でも買って様子を見に行きたいと思っている。流暢、とは言わぬまでも、覚えたドイツ語で現地を案内などしてくれれば、これに勝る喜びはないだろうと今から楽しみにしている。
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