岩屋たけしのメッセージ

平成28年02月27日
「衆議院選挙制度改革について」

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先に大島衆議院議長に提出された調査会答申に基づいて、目下、各党において衆議院選挙制度改革の議論が始まっています。当初、自民党としては「格差是正」を先行させ、「定数削減」を次回の本格国政調査(平成32年)以降に実施する(答申に忠実に基づけばそうなります)考えでしたが、安倍総理総裁の決断によって、昨日発表された簡易国政調査の結果に基づいて「格差是正」と「定数削減」を同時におこなう方向で、目下、議論の集約をはかっていこうとしているところです。

答申では「我が国の衆議院定数は諸外国と比して決して多いとは言えず、定数を減らす積極的な理由は見つからない」としつつ、「国民に対する約束であるからには減らす必要があろう」と述べた上で、10議席の削減を提言しています。そして、その内訳は小選挙区で6減、比例区で4減となっているわけです。大政党はどうしても「比例」を減らしたい、小政党は「小選挙区」を減らしたいということになり、これまでもそれがネックになって意見がまとまらなかったので、双方のバランスを取ったということでしょう。

問題は、その「減らし方」、「定数の割り振り方」です。人口に比例させて定数を割り振るとは言っても、その方式には実に様々なものがあります。そこで、調査会では9種類の方式を仔細に検討した結果、「アダムズ方式」に依ることが望ましいとして、「7増13減(人口の多い東京と県で計7議席を増やし、人口の少ない13の県で1議席ずつを減らす)」という案を提案してきたわけです。

「アダムズ」というのは、人の名前です。第6代アメリカ合衆国大統領であったアダムズ氏が編み出した方式であることから、そう命名されているのですね。簡単に申し上げれば、一定の数で各県の人口を割った値から生じる小数点を切り上げて議席の配分をおこなうという方式です。「切り上げる」ことによって、当該県での議席がひとつになってしまうことを避けることができるので、人口の少ない県に有利な方式だと言われています。確かに「一人区」となれば、「全県一区」となり、知事さんを選ぶ選挙と変わらなくなってしまいますので、それを避けると同時に、人口の少ない県に配慮するためには有効な方式なのだろうと思います。

しかし、それでもいくつかの問題が生じます。たとえば、昨日発表された簡易国政調査の結果にただちに「アダムズ方式」を当てはめるとするならば、「7増13減」ではなくて、「9増15減」にしなければ「格差是正」が適切にできないということになるのです。その場合、増えるところは東京で4増、神奈川で2増、千葉で1増、埼玉で1増、愛知で1増となり、減るところは青森、岩手、宮城、福島、新潟、三重、滋賀、奈良、広島、山口、愛媛、長崎、熊本、鹿児島、沖縄で、それぞれ1議席ずつ減らすということになります。

お気づきのように、増えるところは「大都会」ばかり。人口減に苦しむ地方からはどんどん代弁者が減っていくということになります。「地方創生」と言っている最中にあって、まず、この問題をどう考えるかということがあります。しかも、この計算の基準となっている「議員一人当たりの人口が最少の選挙区」は宮城5区なのですが、ここは先の東日本大震災によって亡くなられた方、移転された方が多かったがゆえに大幅な人口減に見舞われた選挙区なのですね。果たして、そのようにやむをえない事情で人口が減った選挙区をそのまま基準にしていいものかどうかという、「そもそも論」としての問題もあります。

さらには、区割り変更の困難さです。当然のことながら、増えるところも減るところも選挙区の境界線を引き直す必要がありますので、「9増15減」ともなれば、極めて多くの選挙区割りが変更されることになります。東京は現在でも25の小選挙区がありますが、これに4を足して区割りをやり直すとなれば、区市町村をさらに切り刻んで境界線を引かざるを得ないこととなり、その線引きを巡っては、選出されている議員はもとより、地域住民の方々にも少なからぬ混乱や動揺が広がっていくことになると思われます。先の参議院での「合区」の時と同様に「地方自治と国政の連携」といった観点からも、さまざまな問題が生じてくることも予想されます。

それやこれやがあって、自民党では目下のところ、簡易国勢調査に基づく定数是正は「アダムズ方式」に依らずして、「0増6減」によっておこなうほうが、より混乱が少なくて済むのではないかと考えているのです。要は、「当面、都会では敢えて議員増をおこなわず、地方の議員減を最小限にとどめる方式で『格差是正』と『定数削減』をおこなうことのほうが妥当なのではないか」という考えなのです。これは言われているような「党利党略」などでは決してなく、いま申し上げた様々な問題の発生を最小限に喰い止めようという考え方に基づいた提案でもあります。

もともと定数削減そのものに反対している共産党、社民党を除く他の政党はおおむね、答申で示された「アダムズ方式」による定数割り振りをすぐさまおこなうことに賛同しているようですので、目下のところ、自民党だけが我儘を言って孤立しているかのように報じられていますが、決してそうではありません。安倍総理も10年ごとの本格国政調査の結果に基づいて「アダムズ方式」を採用することについてまで否定をしているわけではないのです。各党との調整はまさにこれからです。自民党が現在、なぜ、このような考え方をしているかということを正しくご理解いただいた上で議論を重ねていけば、自ずから各党の意見を集約していけるのではないかと思っています。

いずれにせよ、ほかならぬ「議長」の下での調査会での答申が示された以上、長きに亘って結論が出せなかったこの問題に今度こそしっかりと答えを出していかなければなりません。私も党の選挙制度調査会の会長代理として汗をかいてまいりたいと思います。皆さんにもぜひ、主権者としての立場からご自身の問題としてお考えいただければ誠に幸いに存じます。