岩屋たけしのメッセージ

平成29年08月29日
「羽田孜先生のご逝去を悼む」

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昨日、元内閣総理大臣、羽田孜先生がご逝去なされたとの報に接しました。先生のこれまでの憲政に対する多大なご貢献に対し、心より敬意を表すると同時に、謹んで御霊のご冥福をお祈り申し上げます。

羽田孜先生との出会いは平成二年、私が衆議院に初当選した時にさかのぼります。当時の政界は幾多のスキャンダルが相次いだばかりでなく、折からの湾岸戦争や日米構造協議などに対する政治の機能不全も顕著になりつつあり、巷には政治に対する不信の声が渦巻いておりました。

そういう状況の中で言わば必然的に起こってきたのが「政治改革」運動だったのです。その時、自民党に立ち上げられたのが「政治改革本部」であり、羽田先生は伊東正義先生、後藤田正晴先生らとともに、運動の中心メンバーとしてご活躍され、血気盛んなわりわれ若手を熱心に、そして丁寧にご指導してくださいました。

政治改革の議論は与野党の垣根を乗り越えて極めて激しく展開されました。私ども改革派は「政治の体質を変えていくためには、政治家を生み出す土俵である選挙制度にメスを入れざるを得ない」との結論に達し、反対論が渦巻く中、羽田先生を中心にようやくにして改革案をまとめ上げることができたのでした。
しかし、自民党内はそれでも収まらず、最終的には宮澤内閣不信任決議案の可決を受けて解散総選挙へとなだれ込むこととなり、その後、自民党は大きく分裂することとなりました。私もこの時の選挙で離党して選挙戦を戦い、結果として落選することとなったのでした。

選挙の結果、自民党は政権を失い、細川連立政権が誕生します。そして、そのもとで、ついに「政治改革法案」が可決成立することになります。議席を失っていた私は残念ながらその場に居合わせることはできませんでしたが、テレビ中継を見ながら、改革の成就に喝采し、涙したことを今でも鮮明に覚えています。

羽田内閣は僅かの期間で総辞職することとなりましたが、自民党はそれまでの仇敵、社民党と手を組むことによって政権に復帰し、村山富市内閣が発足しました。しかし、政治改革の末に生まれた新しい選挙制度はやがて否応なく政界の再編を促すこととなり、それはのちに、新しい選挙制度のもとでの初めての本格的な政権交代となる「民主党政権の誕生」へとつながっていきます。

選挙制度が中選挙区のままであったならば、自民党はおそらく空中分解し、新たな離合集散が起こっていた可能性があったと思います。しかし、小選挙区制に変わっていたからこそ、自民党は覚悟を決めて党の再生と政権復帰へ向けての努力を地道に重ねていったのです。

そして、その努力が功を奏し、再び選挙による本格的な政権交代が起こり、自民党は政権に復帰を遂げることができました。政党が政策を掲げて政権を競う「マニフェスト選挙」もこの間、徐々に定着していきました。政権の求心力や政策実行能力も格段に強化されていきました。羽田先生が主導され、我々が汗を流した政治改革の成果はこれらの過程を通じて着実にその成果を挙げてきていると私は思います。

「権力は必ず腐敗する。絶対権力は絶対に腐敗する」と昔から言われています。「常に政権交代の緊張感のある政治状況があってこそ、政権は腐敗を免れ、国家国民にとって、その時々における最善の政治が展開されるのだ」ということが、当時、羽田先生らとともに政治改革を目指した我々の今日もなお変わらざる信念であります。

民主党政権が準備不足と経験不足の故にあえなく潰えたことは事実でしょう。しかし、「政治改革」の長い大きなスパンからすれば、それも途中過程のひとつに過ぎないことであって、それはそれで意味のあったことだと私は思います。今更、あげつらってみたとて、実に詮無いことでしょう。国民はだからこそ、再び自民党を選んでくれたのです。

しかし、言うまでもないことながら、それをもってあぐらをかいているわけにはまいりません。日本の政治構造がこのままでいいはずはないのであって、早晩、政権を担いうる新たな勢力が誕生してくるでありましょう。野党の諸君はそれを目指して今日もなお懸命に試行錯誤を繰り返しておられるものと思います。そして、だからこそ、自民党は常に自己点検と自己改革を怠らず、精進を重ねていかねばならないのです。その「切磋琢磨」を生み出すことこそが、政治改革の目的であり、真髄です。

羽田政権は史上、二番目に短命の政権でありましたが、羽田孜先生が残されたご功績は、まさしく、「日本政治の構造改革」と言うべき、この「政治改革」にこそあり、このことは憲政史上に深く長く刻まれていくことでありましょう。
羽田孜先生、長きに亘り、誠にお疲れ様でございました。ここにあらためてご生前賜りましたご指導に感謝の誠を捧げるとともに、偉大なご功績に深甚なる敬意を表し、御霊の安らかならんことを衷心よりお祈り申し上げます。

羽田先生、どうぞ安らかにお眠りください。

合掌