岩屋たけしのメッセージ

平成29年06月15日
「再び『テロ等準備罪法』について」

昨晩深夜の衆議院での内閣不信任案否決を受けて参議院で「テロ等準備罪」が採決に付され、可決をみました。衆議院は午前2時に散会しましたが、その後、参議院は今朝の8時までの徹夜国会となりました。国会の最終盤までもつれにもつれた法案でしたが、無事に成立させることができて安堵しているところです。

かえすがえすも残念だったのは、この法案を与野党が共通の基盤に立って議論できなかったことです。維新の会さんは修正協議に応じていただき賛成していただきましたが、最大野党の民進党さんや共産党さんは「国民監視社会につながる」などという批判を繰り返しつつ、最後まで強硬に反対を貫かれました。

最終段階で「『中間報告』による本会議採決」という方法を取らざるを得なかったのは、野党の一部が委員会審議の最中に突如、「法務大臣問責決議案」の動議を提出したからでした。「問責決議案」を提出するということは審議を拒否するも同然の行為であり、したがって、与党としては過去の慣例にしたがって粛々と法案の採決をおこなったという次第でしたので、ご理解をいただいておきたいと思います。

それにしても、この種の法案の審議はなぜにここまでもつれてしまうのでしょう。。「特定秘密保護法」の時や「平和安全法」の時にも申し上げたと思いますが、「安全保障」や「治安」に関して政府に新たな権能を付与しようとする際に、国民の皆さんの間に様々なご懸念が生じることは、むしろ当然のことなのだろうと思います。それは思うに、人権に対する配慮が十分ではなかった戦前の記憶や悲惨な戦争体験の記憶がいまなお社会の底流に沈殿していて、それが人々の「警戒心」につながっているからなのでしょう。。

しかし、だからこそ与野党が共通の基盤に立って議論を深めて国民の理解を進め、叡智を結集して最善の案を作り上げていくことが望まれていたのだと思います。民進党さんもその前身の民主党時代には同種の法案の必要性を認め、対象犯罪を306(今回の対象犯罪は277)に絞った案を国会に提出しておられましたので、本来はそこに「共通の基盤」があったはずなのです。

ところが、残念なことに国会審議が始まると本法案は日を追うごとに「対決法案」に仕立て上げられていきました。となれば、もはや「反対のための反対」の論陣を張る以外にはなくなってしまいます。合意を作り上げる意志が無ければ議論が深まるはずもありません。一部のメディアもその風潮を煽り立て、とうとう最後まで嚙み合った議論が展開できなかったことについてはとても残念に思っている次第です。

目下、国連加盟国中、187か国が「国際組織犯罪防止条約」に加盟し、条約に対応する国内法を整備しています。加盟していない国は僅かに11か国。ちなみに、日本以外の国名を申し上げれば、イラン、コンゴ、南スーダン、ソマリア、パラオ、ブータン、ツバル、パプア・ニューギニア、ソロモン諸島、フィジーです。要は、世界の先進国の中では我が国のみが加盟していないという状況にあったのです。

政府与党としては一刻も早く条約に対応できる国内法を整備して条約を批准し、各国の捜査機関との連携も強化していきながら、テロ行為をはじめとする凶悪犯罪を未然に防ぐための体制を構築する必要があると考えたのでした。そこで、過去、何度も廃案になってきた「共謀罪法案」を大幅に見直す形で本法案を策定し、満を持して国会審議に臨んだのです。

審議を通じての最大の焦点は「『一般人』が対象になるか」ということでした。この「一般人」という言葉をどう解釈するかにもよりますが、「犯罪組織に属してもおらず、重大犯罪にかかわる意志も意図もその兆候もなく、通常の生活を送っておられる方々」という風に理解すれば、そもそもそのような方々が捜査の対象になることがあり得ないことは言うまでもないことだと思います。

敢えて申し上げるとするならば、たとえある人物が通常は「一般人」に見えていたとしても、仮にその人物が実際には犯罪組織と深く関わっており、重大犯罪の計画策定や準備行為に参画しているとの十分な情報があり、明白にその嫌疑が認められた場合に初めて捜査の対象になることはあり得る、ということでしょうか。しかし、それに関しては他の犯罪行為であっても同様です。

捜査当局が適切、適正に法律に則って捜査をおこなうべきことは当然であり、本法律が「未遂」の段階で罪に問うことができる内容であることからすれば、他の犯罪捜査以上に、そこには細心の上にも細心の注意が払われるべきとこもまた当然です。法の運用が適切でなければ、当該捜査がまかり間違えば人権を侵害する恐れがあることもまた他の犯罪捜査と同様です。

そういう意味で言うならば、今回の国会審議を通じての唯一最大の成果は、「間違っても人権を侵害することがなきよう、適切に法の運用がおこなわれなくてはならない」という指摘や警告が執拗に繰り返されたということだったと思います。その点に関しては我々もまったく同じ思いであり、今後、党の立場からも国会の立場からも当局の法運用体制をしっかり監視監督していかなければならないと思っているところです。

いずれにしても、「テロ等準備罪法」の最大の目的はテロ等の重大犯罪を未然に抑止・防止して、国民の安全な暮らしを維持することにこそあります。法目的が適切に果されるよう、しっかりと見届けてまいります。